Disney : Little Red Riding Hood

2015.07.29

赤ずきんちゃん
公開:1922年(大正11年)

赤ずきんタイトル
タイトルバック

Laugh-O-Gram Studio(ラフォグラム社)の第2作目。
有名な童話「赤ずきんちゃん」をモチーフにしています。
「赤ずきんちゃん」は、もともと古くから伝わる民話が童話になった作品です。
今日、一般的に知られているのは、グリム兄弟による赤ずきんですが、どうやって今のかたちになったか辿ると面白いのでちょっと見てみましょう。

民話から再話された最初の作品
シャルル・ペロー(フランス) ”LE PETIT CHAPERON ROUGE” (1697)
・主人公に赤い頭巾をかぶせた(もともとの民話では赤頭巾ではない)
・性的なシーンや残酷なシーンを削除(ただし喚起させる書きまわしはあり)
・赤ずきんはおばあさんと一緒に狼に飲み込まれて終わり
・民話にはなかった教訓をつけた 「やさしい狼には注意」

ロマン派作家によるドイツ初の赤ずきん
ルートヴィヒ・ティーク(ドイツ) ”Tragödie vom Leben und Tod des kleinen Rothkäppchens” (1800)
・赤ずきんは反抗的で、おばあさんの忠告を聞かずに赤いずきんをかぶる
・おばあさんと一緒に狼に食べられる
・猟師が登場、狼を撃ち殺す
・食べられた赤ずきんとおばあさんは生き返らない

もっとも知られている赤ずきん
グリム兄弟(ドイツ) ”Rotkäppchen” (1812)
・赤ずきんは母親の言いつけを守らず、おばあさんの家に行く途中で寄り道をする
・赤ずきんとおばあさんを食べた狼は寝てしまい、猟師が腹を切り裂いて二人を救出、小石をお腹につめられた狼は川で溺れ死ぬ
・赤ずきんは母親の言いつけを守らなかった自分を悔い改める

そしてディズニーでは、このストーリーを以下のようにアレンジしています。

ディズニー版 ”Little Red Riding Hood” (1922)
・狼が人間の男
・おばあさんは留守にしていて登場しない
・先回りして家に到着した男が、家に入り赤ずきんを待ち構えて襲う
・赤ずきんには相棒の犬がおり、犬が助けを求める
・赤ずきんを助けるのは、猟師ではなく飛行機乗りの少年
・男は少年により池に落とされる(池に落ちるという展開はグリム童話と同じ)
・最後は教訓を残して終わるのではなく、救出された赤ずきんとヒーローのキスシーンでハッピーエンドである

赤ずきん1
お母さんがドーナツを作っています。生地を丸めてうしろへ放り投げると、猫が銃でそれを撃ち穴があいて、ドーナツになって鍋の中に落ちるというわけ。鍋の中のドーナツをつまみ食いすると、猫は目を回して倒れてしまいました。10秒たっても起き上がらなかったので、あの世から透明な猫がきて、担架で倒れた猫を運んでいきます。
※これは、後々もずっと使われる手法。気絶したり、眠ってしまったキャラクターを、あの世(または夢の世界)の番人が迎えに来る。キャラクターはのちのち生還することが多いのですが…

赤ずきん2
おばさんがドーナツをバスケットにつめて、赤ずきんをお使いにやらせます。 車は、うしろにソーセージがぶらさげてあって、それを車につながれた犬が追いかけて走り、車輪が回るという仕組み。
※これものちのちも使われるパターン。「乗物の動力=面白いアイディア」というギャグが集結したのが1943年の「グーフィーのすてきな乗り物」
赤ずきんは道中で男に出会います。二人は会話を交わして別れるが、男は悪いやつだった。赤ずきんが道草をくっている間に、おばあさんの家へさきまわり。

赤ずきん3
おばあさんはあいにく留守。男は家に隠れ赤ずきんを待つ。そして赤ずきんがやってきて、家の中に入り…男に襲われる!HELP ! と助けをもとめる赤ずきん。驚いた犬は、助けを求めて一目散に走る!

赤ずきん4
飛行機乗りの少年に助けを求めた犬、少年は犬を乗せて赤ずきんのもとへ!おばあさんの家の上まで来た飛行機が釣り糸をたらし、家を釣り上げる。地上にのこされた赤ずきんと男、男は慌てて車に乗って逃げ出すが、飛行機に釣り上げられて池の中へ落とされる。無事に救出された赤ずきんと少年は飛行機の中でキス。ハッピーエンド。

なぜ、狼役を人間の男にしたのか?
人間の男が赤ずきんを襲う、というのは生々しく、子ども向けのアニメーションには似つかわしくないような気がしますが、「知らない人と話してはいけない」などという、直接的な教訓なのでしょうか?この時代「知らない人と話してはいけない」なんていう概念はあったのか?

猫は担架で運ばれていってから、二度と登場しない。つまり死んだ。
なぜドーナツを食べただけで死ぬのでしょうか?まさか毒入りドーナツ?もしお母さんが作ったのが毒入りドーナツなら、一気にぶっ飛んだ話になるのですが…。(お母さんはおばあさんを殺そうとしていた?)

おばあさんが外出中で登場せず、助けに来るのはハンサムな少年。
これは少年と赤ずきんのロマンスを強調するため?
とはいえ、展開としては起承転結の「起承」にかなり時間が割かれていて、少年が登場してから1分もなく終了するのですが(笑)

民話や童話のパロディというアイディア
アニメーションのテーマにクラシカルな既成作品を持ってくることは、最初期から行われていたということが、ラフォグラムスタジオ時代の作品で分かります。ディズニーは既成の絵画、小説、映画、自分がピンときたものは臆面もなくアニメに取り込みました。大衆的なもの(漫画)と、芸術的、高尚、クラシカルなエッセンスをかけあわせ料理すること、なにが「アリ」でなにが「ナシ」か、見極めることに関しては本当に天才でした。
この才能は、長編アニメーション製作でさらに大きく花開きます。