男性対女性

2016.01.28

監督:島津保次郎  製作:松竹 / 1936年(昭和11年)

タイトル クレジット
タイトルとクレジット。劇中で多くのレビューシーンがあるので、そのスタッフもクレジットされています。

あらすじ
渥見商会の息子たちは家を継ぐ気もなく好きなことをやっている。
兄の行雄(佐分利信)は人類学の研究。弟の哲也(上原謙)は舞台演出家。
フランス帰りの哲也は、父親(藤野秀夫)が出資する東洋劇場のレビューを演出し好評をとるが、実は劇場は倒産寸前。劇場主の藤村(水島亮太郎)は金策に奔走していた。藤村は娘の時子(田中絹代)を岡倉男爵の息子(斎藤達雄)と政略結婚させようとするが、行雄が好きな時子は耳を貸さず、失敗する。
時子の弟、滋(磯野秋雄)は女中の菊(大塚君代)と恋仲になり、暇を出された菊を追いかけて東北の牧場へ家出。
資金調達に失敗し、また今までの贈賄関与にも監査が入ると知った藤村はピストル自殺し、東洋劇場は当面休演になった。

一方で、渥見商会も不運が重なる。
悪徳ブローカー山城が仕入れた粗悪な輸入品で大損をしたのを皮切りに、工場は火事で焼け、東洋劇場への出資金も藤村の自殺で無になってしまう。社長である父親は実業界から引退することを決め、自宅や行雄の蔵書を抵当に入れることになった。
東洋劇場は岡倉男爵が経営を引き継ぐことになり、ふたたび哲也がレビューの演出を任される。
行雄は人類学研究会からの推薦で、モンゴル~チベットを調査するため日本を出ることになった。
家の事情に関係なく、自分たちの道を歩む若者たち。
時子も、行雄を追いかけてモンゴルへと旅立っていくのだった。

配役
渥見恭平…藤野秀夫
渥見行雄…佐分利信
渥見哲也…上原謙
藤村市造…水島亮太郎
藤村静子…吉川満子
藤村時子…田中絹代
藤村滋…磯野秋雄
津田美代子…桑野通子
津田園…飯田蝶子
山城庄太郎…河村黎吉
清瀬支店長…岩田祐吉
水上平吉…野寺正一
水上菊江…大塚君代
岡倉彦馬…上山草人
岡倉清彦…斎藤達雄
執事 篠崎…新井淳
渥見商会社員…武田秀郎(春郎?)、奈良真養、石山隆嗣、山内光
時子の友 秋子…高杉早苗
牧場の男達…阪本武(坂本武)、小倉繁
婦人教風会幹事…岡村文子、青木しのぶ、雲井つる子
レヴューガール…小桜葉子、東山光子、築地まゆみ
上海社員…河原侃二、西村青児
演出助手…小林十九二

若林廣雄、谷麗光、仲英之助、日下部章、小藤田正一、花村千恵松、立花泰平、祇園初枝、坪内美子、小池政江、小牧和子、久原良子、浪花友子、高松栄子、青山万里子、二葉かほる、香取千代子、忍節子、江坂静子、六郷清子、森川まさみ

特別出演…水の江滝子、オリエ津阪、長門美千代、井草鈴子
松竹少女歌劇団、パラマウント・ショウ、ハレル・アンド・ロバート、ジョウ・ファレン


松竹の撮影所が蒲田から大船へ移転した第一作。
オールスター総出演です。監督はもちろん巨匠、島津保次郎監督!
当時としては長い2時間超の豪華版で、上海租界のショーや東洋劇場のレビューのシーン(松竹少女歌劇団出演)にかなり時間を取っており、映画本体のストーリーとともに当時の少女歌劇の舞台も楽しめる内容となっています。

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戦前の上海の街なみ。映画自体のロケーションを行ったわけではないようで、哲也(上原謙)と清瀬支店長(岩田祐吉)が人力車で街を走るシーンは、合成です。

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魔都、上海でショーを観る哲也(上原)と渥見商会の一行。タバコ売りの少女役で、高峰秀子がいるのです。(ノンクレジット)

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哲也(上原)が演出するレビュー。カーテン前でモダンダンスの場面あり、豪華な総踊りの場面あり、美術や衣装含めそのビジュアルはそのまま現在の宝塚。違うのは、男役は声が高く無理して男っぽくしていないところでしょうか。髪も肩までのボブの人も多いです。

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監事室から本番チェックする哲也(上原)と演出助手(小林十九二)。もちろん生オケです。客席で田中絹代の前に座る少女は、またもや高峰秀子。

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哲也(上原)のガールフレンドは照明スタッフの美代子(桑野通子)。当時は照明ではなく配光といっていて、美代子も「配光部の主任」。ピンスポットで舞台を支えます。現代の大劇場では、ピンスポットの部屋と一般照明をオペレーションする調光室とは分かれていますが、この時代はこの部屋ですべての照明を管理していたようです。壁には、大入袋が並べて吊り下げてあるのが見えます。いまも舞台照明は女性が多いですが、当時からそうだったのかと思うと興味深い。この時代の職業婦人といえばショップガール、電話交換手、バスガイド、エレベーターガール……そんな中で、舞台の裏方という仕事をヒロインの一人が演じる、こんな珍しい映画あるでしょうか?当時の照明機材も見れ、資料としても貴重な映像だと思います。

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舞台袖の様子もリアルに撮影されています。出番終わりで駆け込んでくる端役の出演者たち。衣装の早替え用の大きな鏡もあります。「衣装部」と書かれたボテ箱、哲也(上原)の後ろを通る大道具と思しき男性。出番を待つ袖で舞台をみつめる出演者たちと、チェックする哲也(上原)、演出助手(小林十九二)。

男性対女性_タップ
この頃はタップが輸入されて大流行。少女歌劇にももちろん取り入れられます。本番前に舞台をつかってタップの稽古をする出演者たち。先生のタップダンサーもお手本で魅せます。演出家の哲也は、いつも首からストップウォッチを下げています。
-さあ、やったやった。シュバリエだってマクドナルドだって、一夜漬けのスターじゃなかったんだぜ。

男性対女性_食事
島津監督といえば、美味しそうな食事の描写。今回は、哲也(上原)と美代子(桑野)が劇場帰りに食べに行くトンテキ(恐らく)です。

男性対女性_アイアイ-01
上原謙と桑野通子のアイアイコンビ。フランス帰りの演出家と明るく現代的な舞台スタッフという、ユニークなカップルです。
ミッチー(桑野)の仕事着は、サンバイザーにツナギ、軍手。汗をかくから首からタオルも下げています。本当にこの通りだったのか分かりませんが、かなり可愛らしい作業着です。

男性対女性_弟と女中-01
時子(田中)の弟、滋(磯野秋雄)は女中(大塚君代)との仲を引き裂かれます。二人とも泣きの演技がとても上手いです。駆け落ちした東北の牧場では、とても幸せそう。

男性対女性_レビューB
レビュー二作目。幕があがると本物の車がデーン。その上でドレスを着た娘役はかろやかに踊ります。

男性対女性_停電-01
この本番中、哲也は支配人に就任した山城(河村黎吉)と対立し演出家を降りることを決意。それを見ていた美代子(桑野)も、照明の電源をすべて落として公演を中断させてしまいます。もちろん舞台上は真っ暗でパニック、オーケストラだけが気づかずにしばらく演奏を続けるのがリアル。美代子は飛び出した哲也を追いかけ、二人で意気揚々と劇場を出ていく(笑)。

男性対女性_レビューC
哲也がふたたび演出として戻ってつくった舞台。モダンダンスからの大団円。

男性対女性_田中絹代佐分利信-01
時子(田中)と行雄(佐分利信)。時子の行雄への情熱はすさまじく、モンゴルまで追いかけていき、研究第一で恋愛には消極的な行雄の心をついに溶かします。